窓を開ける?開けない?高気密高断熱住宅の通風について

高気密高断熱住宅において、通風については議論の対象となることがあります。
計画換気をしているのだから、窓は開けなくていい。
パッシブ設計なら通風も考慮すべき。
どちらも間違いではないのですが、自然換気によって室内環境がどう変化するかを知っておく必要があります。
今回は窓を開けての自然換気について解説します。

窓、開けていいの?

目次

結論、窓は開けたければ開ければいい!

早速、身もふたもない結論で恐縮です。
個人的な考えとしては、風が気持ち良ければ窓を開けて換気すればいいと思っています。
開けたければ開ければいい。
快適な温度が違うように、人それぞれかと思います。

ただし、換気は外気を取り込む行為であることを忘れてはいけません。
外気は冷たい時もあれば暑い時もある。
さらに厄介なのは、湿度も一定ではないということ。

気温が低いからと言って取り入れた外気は、実は湿度がメチャクチャ高かったということは往々にしてあります。
せっかく換気をしたのに、なんだかジメジメするのでは意味がありません。

外気のコンディションとして、自然換気に適したタイミングはほとんど無かったりします
温度と湿度をにらめっこして、「よし、今だ!」って換気できる暇な一般人はまず居ません。
たしかに、パッシブ設計の考え方では通風を利用すると消費エネルギーを削減することができますが、なかなか難しいのが現状です。

換気のために日々の生活にストレスを感じるぐらいなら、窓は開けなくてもいい
高気密住宅であれば計画換気もしっかり働くので、わざわざ自然換気をする必要は無いのです。

気持ち良ければ開けてもいい。
めんどうなら開ける必要は無い。
それだけのことだね。

絶対湿度とは?

ここからは、外気を取り入れる自然換気について、知っておくべき原理原則について解説します。
まずは、外気の状態を判断するために必要な絶対湿度についてです。

絶対湿度?聞いたことあるような・・・

中学校の理科の授業で習ったかもしれませんね。
氷水をいれたコップの外側に水滴が付く結露現象のくだりです。

空気中に含まれる水分量を絶対湿度と言い、単位はg/㎥です。
一般的な湿度計では、湿度50%などと%で表示されるのは相対湿度になります。
空気中に含むことのできる最大の水分量を飽和水蒸気量といい、絶対湿度との関係で相対湿度の%が決まります。

空気には温度によって含むことのできる水分量が決まっています。
暖かい空気はたくさんの水分を含むことができ、冷たい空気は少ししか含めません。
つまり、30℃50%の空気と10℃50%の空気では、相対湿度が同じでも10℃50%の方が絶対湿度が低くなります。
これが理解しにくく、自然換気のタイミングを難しくさせる要因となっています。

難しそうだけど大事なことだね

湿度は冷やせば上がり、暖めれば下がる!

温度湿度の関係、特に絶対湿度については空気環境を考える上では避けては通れないポイントです。
難しいので、まずはザックリしたアウトラインをお伝えします。

空気は冷やせば湿度が上がり暖めれば下がる。

同じ空気であれば、暖めても冷やしても含まれる水分量が同じなので絶対湿度は変わりません。
変わるのは相対湿度の%であり、暖めれば下がり、冷やせば100%に近づいていきます。100%を超えれば結露として現れます。
これを理解するために必要なのが『湿り空気線図』です。

湿り空気線図

絶対湿度がkg/kg表記なのですが、基本は同じなのでこちらの図を引用させていただきました。
なんだか難しそうな雰囲気なので、なるべく簡単に説明します。

赤が温度を表しグラフの垂直軸です。
青が相対湿度の%で曲線に沿って表現されています。
緑が絶対湿度でグラフの水平軸になります。

夏のモデルケース

モデルケースとして夏の場合を考えてみましょう。
外気が気温30℃湿度60%と仮定。これをエアコンで25℃まで冷やしたとします。
絶対湿度は変わらないので、25℃のラインまで水平動。
すると湿度は80%になることが分かります。

実際はエアコンによる除湿効果もあるので絶対湿度も下がるのですが、空気を冷やすだけだと相対湿度は上昇し不快に感じてしまうのです。

夏のモデルケース

冬のモデルケース

次に冬の場合を考えてみましょう。
外気の設定を気温5℃湿度60%とします。これを25℃まで暖めた場合。
こちらも絶対湿度は変わらないので、相対湿度は17%ほどに低下することが分かります。

これが高気密高断熱住宅においてしばしば問題になる過乾燥の原因となっています。
計画換気をしていても過乾燥になるので、この時期の自然換気はしない方がいいでしょう。

冬のモデルケース

アプリでも確認できる絶対湿度

このように、暖房・冷房によって湿度が変化するメカニズムはご理解いただけたかと思います。
細かいところがわからなくても、感覚で理解できていれば窓を開けるタイミングが判断できると思います。

この絶対湿度ですが、湿り空気線図をいちいち確認するのは手間ですよね。
最近ではスマホのアプリでも簡単に確認することができます。
今回は私が使っている『空気の計算機』を紹介します。無料です。

APP空気の計算機

使い方は簡単。
外気の温度と湿度を入力して計算を実行します。

すると絶対湿度をはじめとして計算結果が出力されます。

その後、絶対湿度をタップすると、それ以外の数値が消去されます。

今度は室内側の温度を入力。

計算を実行すると湿度が正確に出てきます。

これでいくと湿度は16.5%という結果になります。

これなら気軽に確認出来そう

まとめ

1年の中で換気に適した外気というのは、条件的にほとんど無いと思ってください。
取り込んだ空気を冷やしたり温めたりする過程で、室内の湿度が変化します。
場合によってはジメジメしたり過乾燥の原因となるので注意が必要です。

高気密高断熱住宅においては窓を開けての換気は不要と考えています。
風が気持ちよくて窓を開けるのは個人の自由ですが、その後の室内環境をコントロールする難しさも理解しておきましょう。

機械による換気もあるし窓は開けない方が良さそうだね

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメント一覧 (1件)

コメントする

目次