無垢フロアは健康に良いの?フローリングの選定を考え直す

一日の1/3以上を過ごす住まいは、健康を考える上で大きなウエイトを占めます。
家づくりにおいて『自然素材で作られた家』が長年のトレンドとなっているのは間違いありません。
その流れの中で、無垢フロアが健康に良いものであるとされていますが、それについて本日は考えてみたいと思います。

目次

無垢フロアとは?

無垢フロアとは、天然木材を使用したフローリングのことです。
木材をそのまま加工するため接着剤を使用しません。
1枚の木でできているため『無垢』と呼ばれる理由です。

無垢フロアの断面

それに対して無垢フロア以外のフローリングは、合板などの基材に表面材を貼り合わせたもの。
表面材の違いで主に3種類に分かれます。

化粧シートフロア

プリントによって木目を表現した化粧シートを貼ったフローリング

突板フロア

薄くスライスした天然木を貼ったフローリング

挽き板フロア

2㎜程度にノコギリで挽いた天然木を貼ったフローリング

3㎜厚の挽き板を貼った挽き板フロアの断面

無垢フロア以外は、上記の写真のように積層の合板やMDFと呼ばれる繊維を接着剤で固めたものを基材として使います。
さすがに化粧シートはプリントなのでわかりますが、突板と挽き板は天然木材なので仕上がってしまえば無垢フロアとの違いはほとんどわからないでしょう。

無垢フロアが良いと言われる理由

無垢フロアは健康面を含めて良い物とされ、住宅の建材として積極的に使用されています。
そのトレンドは、私が仕事を始めた20年前からあって今もなお続いています。

なんで、みんな無垢フロアを選びたがるの?

無垢フロアが良いとされる理由は3つあります。

  1. 有害物質の発散が少ないこと
  2. 自然素材であること
  3. 厚み全てが同一素材であること

ここからは、それぞれを詳しく解説していきます。

1.有害物質の発散が少ないこと

合板を基材としたフローリングの場合、製造過程で接着剤が使われます。
この接着剤に化学物質が含まれており、シックハウスなどの症状を引き起こすと言われています。

シックハウス症候群とは?

建物内に蓄積される化学物質や微粒子、カビなどの室内空気汚染物質が原因で発生します。
シックハウス症候群の症状には、頭痛やめまい、喉のイガイガ感やのどの痛み、鼻づまりやくしゃみ、目のかゆみや痛みなどがあります。長期間にわたってこの環境にさらされ続けると、疲れやすくなったり、集中力が低下するなどの影響も出ることがあります。

無垢フロアの場合は接着剤を使用しないので、有害な化学物質を発散する可能性は低いのです。
自然素材=健康素材という認識から無垢フロアを選ぶ場合が多いのではないでしょうか。

2.自然素材であること

先ほども書きましたが、自然素材=健康素材という認識があること。
自然の物であることが体への害が少ないというのは、オーガニック食品と同じような考え方です。

木材を利用することでの心理的な効果があることもわかっています。
寝室に木材を多用した場合、安らぎを感じて不眠症が改善されるという研究データもあります。
森林浴をするようにストレスの緩和効果も期待できます。

また、風合いや質感は天然木ならではで、自然な見た目から高級感を感じることができます。
フローリングは建材の中でも肌に触れやすいものであり、温かさも大きな特徴となります。

3.厚み全てが同一素材であること

無垢フロアの厚さは一般的に15㎜以上あり、その厚み全てが1つの木で構成されています。
そのため、物を落としたりして傷ができたとしても、下の基材が見えてしまうことがありません。

全てが天然木であることから、汚れたり傷ができたとしても削って修復することが可能です。
これが、化粧シートのフロアであれば貼り替えるか色を塗る以外に方法が無いのです。
そういう意味でも永続的に使用できる材料であることも特徴です。

自然素材という安心感が大きいね

見えない所にも合板は多用されている

意匠性とメンテナンス性はさておき、自然素材のため化学物質を含まないというのが無垢フロアの大きなメリットではないでしょうか。
ところが、無垢フロアを選ぶと合板を使わないことにはなりません

実は、家を建てるにあたって合板はいたるところに使用されます。
壁や屋根の下地はもちろん、無垢フロアを張る下地にも合板が使われています

せっかくの無垢フロアなのに下地が合板なの?

一昔前だと、根太という細い木材を30㎝間隔で敷いた上にフローリングを直接張る構法もありました。
現在では施工性や耐震性を理由に、構造用の合板を張った上にフローリングを施工することが一般的になっています。
つまり、どんなフローリング材を選んでも、すぐ下には接着剤を使った合板があるのです。
そして、フローリングを施工する時にも接着剤が使用されますので、有害な化学物質を避けるために無垢フロアを選ぶことはあまり意味がないのかもしれません。

結局、合板や接着剤は使うんだね・・・

そもそも化学物質は規制されている

そもそも、シックハウスを引き起こす有害な化学物質については建築基準法で使用が規制されています。
『シックハウス対策に係る法令等』によってクロルピリホスは使用禁止。ホルムアルデヒドについては、発散速度によって使用が制限されます。

そもそも、シックハウスの原因は規制されているんだね。

各建材には、ホルムアルデヒドの発散速度を☆で表示する必要があり、現在流通している建材は発散速度が最も遅いF☆☆☆☆(エフ・フォースター)であることがほとんどです。

合板に刻印されたF☆☆☆☆

これらF☆☆☆☆の刻印は、建具や既製品の靴箱にはじまり接着剤にいたるまで、あらゆる建材に入っています。
つまり、ホルムアルデヒドが引き起こすシックハウスの可能性は極めて低いのです。

無垢フロア神話を考え直す時だね

自然素材からも化学物質は出ている

シックハウス対策として日本で規制されているのは、クロルピリホスとホルムアルデヒドの2つですが、EUなどではさらに多くの化学物質が規制されています
シックハウス対策を考えた家づくりをするのであれば、もっと細かく知っておく必要があります。

このように、シックハウスの原因と考えられる化学物質は多岐にわたりますが、無垢フロアの原材料である天然木からも化学物質は発散されます
例えばヒノキ特有の香りであるヒノキチオールも化学物質ですし、アセトアルデヒドや建築基準法で規制されているホルムアルデヒドも微量ですが発散されています。
化学物質敏感症の方は、こういった天然成分でも反応する場合があることは知っておきましょう。

天然素材でも化学物質は出てるんだね

無垢フロアを選ばなくてもいいのでは?

さて、考えれば考えるほど難しいシックハウス対策。
ホルムアルデヒドなど、最低限の規制は建築基準法でなされているため、現在お住まいのアパートなどでも症状の無い方は、あまり神経質にならなくてもいいかもしれません。

無垢フロアのメリットがわからなくなってきたぞ

そうなってくると無垢フロアのメリットは、自然素材による風合いや質感長く使えるメンテナンス性に絞られてきます。
自然素材の風合を重視するのであれば、挽き板や突板も視野に入ってきます。
削ってメンテナンスすることを考えれば2~3㎜の挽き板がいいかもしれません。
挽き板フロアであれば見た目は無垢フロアと遜色なく、ちょっとした傷であれば削ってメンテナンスすることができます。

ここで無垢フロアのデメリットに触れておきます。
無垢フロアは木材から切り出した1枚の板であり、自然の木そのものです。
自然のままの木は長年使っていると乾燥により収縮でフロア同士で隙間が生まれます。
また、切り出した木材の部位によっては表と裏で収縮率が違うため反りが発生します。
無垢フロアは自然素材なので隙や反りは避けられないのです。

その点、挽き板フロアは基材が積層合板のため隙や反りが発生しにくくなります。
積層合板は薄い木材の重ね合わせですが、繊維方向を互い違い貼っています。
こうすることで、天然木特有の変形を極力抑えることができるのです。

挽き板フロアでもいいのかもしれないね

挽き板フロアのメリット

ちなみに、我が家は2㎜の挽き板フロアを採用しました。
材種はオークです。
見た目には無垢フロア同様、天然木らしいムラが出ています。
ちょっとムラが強すぎる気もしますが、ひとそれぞれの好みかと思います。

我が家のオーク挽き板フロア

挽き板フロアの金額は、一般的に無垢フロアと同等か安いくらいだと思います。
天然木を使う量が少ないので、状態の良いものが入ってくる可能性が高いです。
見た目のわりに価格が安く抑えられるので、ブラックウォールナットのような高級外材にも手を出しやすくなります。
無垢で状態の良いブラックウォールナットって、ビックリするぐらい高いですからね。

傷は無垢フロア同様に入りますが、水を含ませたティッシュを置いておくと、しばらくすればわからないぐらいに戻ります。
表面の2㎜の範囲であれば、削って補修することも可能です。

現在3年目ですが、目立った隙もなく反りにいたっては全く感じられません。
新築時よりもツヤが出て、表面はなめらかになった印象さえあります。
今はまだわかりませんが、天然木なので日焼けによって徐々に色も濃くなっていくと思われます。

挽き板フロアのメリット

・見た目や質感は無垢フロアと同じ
・無垢フロアより安い
・高級外材にも手を出しやすい
・削ってメンテナンスもできる
・収縮による変形が少ない

無垢フロアのデメリットを抑えて、家族と共に変化する床。
挽き板フロアを選択肢に加えてみてはいかがでしょうか?

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